00.素材の違いがお茶の味にも影響する

急須を買おうと見てみたら、いくつも焼物の産地名が出てくることに気が付いたけれど、何が違うんだろう。
そう思って、検索して下さった方も多いかもしれません。
この記事では、焼物の産地の個性が出てくる「素材の違い」と急須で使われる産地についてまとめることで、急須選びの参考になるようにまとめています。
具体的には、こんな疑問が解消できます。
・炻器(せっき)って何?
・よく見る常滑焼(とこなめやき)はどんな素材なの?
今回の記事を読めば、素材の違いを理解することの大切さと、おすすめの産地が分かります。
実際、今回おすすめする産地の急須をご購入頂いた方からは、以前と比べてお茶の味が変わったという感想・レビューを沢山いただいています。
ぜひ大切なポイントなので、読んでみて下さい。
01.炻器と磁器の違い

まず、ここで素材と言っているのは、急須を形作っている原材料のことです。
素材には、大きく分けて3種類あります。
素材の種類
・陶器(とうき)
・磁器(じき)
・炻器(せっき)
このうち、陶器と磁器を大雑把に理解しましょう。
簡単に言えば、陶器は土もの、磁器は石ものです。
前者は、土の粘土で作られますが、磁器は石を細かく砕いた粉を粘土状にして作ります。
陶器は低温で焼き、その出来上がりはざらざらやボコボコとした感じがあり、叩いた音も鈍い印象です。
一方磁器は、高温で焼き、その出来上がりはツルツルとしていて、叩いた音は高音で響きます。
炻器とは、その両者の間的な性質を持つ存在で、急須でよく使われる素材です。
土から作られるものの、鉄分を多く含み、吸水性はそれほどありません。
叩くと磁器のような高い音がしますが、磁器と異なり光は透過させません。
ただ、土からできるという点で、広く考えれば陶器の仲間と言われています。
02.素材がお茶の味に影響する理由

そんな素材が、お茶の味に影響するのだから不思議です。
具体的には、陶器や炻器の急須は、お茶の味をまろやかにすると言われています。
理由は、2つあります。
理由①
素材に含まれる鉄分(酸化鉄)とお茶の渋み成分(タンニン)が化学反応し、渋みが消えるから
理由②
炻器の素材には細かな穴(孔)が他より多くあり、水分と共に渋み成分を多く吸着する傾向があるから
※茶業技術協会研究発表データをまとめた「急須の材質による緑茶成分の変化」参照
実際、炻器の急須の内側を触ると、ザラザラしているのが分かると思います。
このザラザラが、お茶をまろやかにしているんです。
陶器もお茶の渋みを取りますが、むしろかなりお茶の渋みを取るため、お茶本来の風味も適度に残す炻器が、急須の素材としては好まれています。
03.素材と産地の分類

では、3つの素材に代表される焼物産地をそれぞれ整理してみます。
①陶器
益子焼(栃木)、美濃焼(岐阜)、萩焼(山口)、やちむん(沖縄)
②磁器
波佐見焼(長崎)、有田焼(佐賀)、九谷焼(金沢)、美濃焼(岐阜)
③炻器
備前焼(岡山)、常滑焼(愛知)、萬古焼(三重)
それぞれ、もしお持ちの焼き物があれば、つるつるなのかザラザラなのかなど、特徴を確かめてみると実感できるでしょう。
美濃焼は、陶器と磁器の両方共大量に生産され、様式がないのが美濃焼と言われるほど多様な陶磁器が作られています。
しかし、何といっても急須のおすすめは、炻器でしょう。
特に、常滑と萬古は長く急須を作ってきた歴史と技術が詰まっています。
なお、お茶の味を邪魔しないという意味で、磁器タイプも多く出回っています。
最近では、デザイン性の高い磁器の急須やポットにも人気が集まってきています。
04.素材別おすすめの急須まとめ
ここまでの情報を踏まえた上で、それでも急須を選べない!という方に向けて、実際に多くの茶器を販売している私自身がおすすめできるものをピックアップしてみます。
①波佐見焼
西海陶器さんのマジョリカです。
楽天などでは大人気の急須ポットで、僕自身トライアルで使っていましたが、本当に使いやすさは折り紙付きです。
茶葉が詰まらないステンレス茶こしが付き、かつ湯切れも良い。
そのうえ、北欧風なデザインがおしゃれです。
ちなみに、買うなら楽天よりもamazonの方が基本安くなっております。
②常滑焼
急須と言えば、常滑焼。
その常滑焼で、ここ10年で一気にハイブランドとして知名度を高めたのが「東屋」。
高いデザイン性と確かな品質が最大の魅力です。
シックなデザインと持ちやすさはピカイチ。
ただ、値段が高めなのがネックです。
続いて、きつさこ商品です。
きつさこのブランドの中では、高価格帯にあたりますが、それでも東屋さんに比べればかなり安いです。
ポイントは、横にワイドな形と精巧な作りです。
精巧過ぎて、他の隙間が全くないため、蓋の穴をふさぐと注いでいるお湯が止ります。
③萬古焼
萬古焼(ばんこやき)は、そこまで有名なブランドはないのですが、この至高急須は以前テレビで放送されたことで、一気に売れた時期がありました。
人気の秘密は、注ぎやすさと茶葉が漏れず、かつ捨てやすい構造です。
確かに、内部が加工されていて茶葉が捨てやすい工夫等、こだわりが詰まっています。
ただし、弱点は茶こしが粗めで茶葉が漏れる、そして内部の加工でお茶をまろやかにする効果は期待できないことが挙げられます。
そして、やはりお高めです。
最後もきつさこ商品です。
こちらは打って変わって、最高のコスパ品。
湯切れの良さとお値段の安さを両立させ、かつ伝統的な萬古焼の急須です。
正直、デザインの好みさえ合えば、弱点らしい弱点はない商品ではないかと思っています。
今回は以上です。
素材を元に、急須を選ぶ参考になったら嬉しいです。
では、また。